RYU'S MESSAGE / TOPICS

2020/11/16 五嶋龍からのメッセージ

日本の皆様、RFの皆様

 

ツアーで配るプログラムには3曲だけを載せてもらった。
3曲?そんなはずないでしょ!ですよね。
でも、何が起こっても不思議でない時節、急に休憩なしの1時間プログラムに、と決めなければならない場面がないとも限らないし、プログラムが短めになることはあっても普段より長めにはならないだろう。あれこれ考え、絶対に弾く3曲をプログラムに載せた。
ドビュッシー・ソナタ、岩代太郎 “F50”、ブラームス・ソナタ3番、だ。こうして横書きにすると“F50”の形相が違う。「F」フクシマ。「50」は原発事故に携わった人々が約50人だったことから事実に基づいて映画化された“Fukushima 50”の音楽を担当した岩代太郎がこの25周年ツアーを機会に書下ろした曲である。
映画は、2011年に起こった東日本大震災の引き起こした津波によるフクシマ第1原子力発電所事故の現場を通して、自然の有り様から言えば微塵にもならない人間に与えられた終焉までの時間を、津波、地震の悪霊の前に身を投じて賭ける男たちへの賛歌だと思った。ダイナミックなフクシマ50のサウンドトラックは、映像と観客の間に不可欠な薄絹の様に揺れるものであったと僕なりに解釈している。事故から10年が経とうとする今、我々は何を知り学んだか、知ろうとしてきたか。この“F50”はそれを問い続ける岩代の抒情詩ではなかろうか。
 
 

 

2020年11月16日    五嶋 龍