RYU'S MESSAGE / TOPICS

2020/11/13 五嶋龍からのメッセージ

日本の皆様、RFの皆様

 

来週11月21日(土)にスタートする僕のデビュー25周年リサイタルで演奏する曲について、少し紹介したいと思います。

 

クロード・ドビュッシー(1862年~1918年)は本人が好むと好まざるかは別として、印象主義音楽家と呼ばれる。印象派(印象主義)という表現はもともと、新進画家グループ(モネ、ドガ、セザンヌら)に共通したジャポニズムの表現に端を発するものであり、音楽においてもドビュッシーを筆頭として当時フランスから発信されたクラシックから近代への潮流となるファッションとなった。

 

1917年5月5日、ドビュッシーは彼の最終作となったヴァイオリン・ソナタト短調のピアノ・パートを初演し、それが彼の演奏家として最後の公式の場となった。

 

第1楽章 Allegro vivo
第2楽章 Intermède. Fantasque et léger
第3楽章 Finale. Très animé

 

1867年に開催されたパリ万博に出展された日本の伝統ある陶器や葛飾北斎の芸術に心を奪われたのは、交響詩「海」のスコアの表紙に北斎の富嶽三十六景「神奈川沖浪裏」を用いたことからも覗われる。子供のころから船乗りになりたいという夢があったと伝えられているが、兎も角彼の音楽の流れは「水」の印象に裏付けられているように思う。人間ドビュッシーを語る時、彼は自由人というか、女性に関しても水の戯れのようで感心される行動はしなかったのも知られるところである。

 

絵画を初め、音楽にも影響を与えた日本独自の伝統芸術が単に異国の珍しい逸品として多くの精鋭がそれに魅せられ、愛しただけでないのは素晴らしいとしか言い表せないことだが、同時にパリ万博で演奏されたガムランの音楽にも多くの芸術家が興味を持ったのを考え合わせると、一体彼らはインドネシア、ジャワの影絵(ワヤン・クリ)で表されるインド古代の抒情詩と混同はしなかったのか。と、ふとあのエキゾチックでコケティシュな見事な動作が目に浮かぶ。

 
ともあれ、このソナタはヴァイオリンの音色が自然で美しく、長くない全楽章に居眠る暇なく終わるのもおしつけがましくなく、、、、大好きな曲の一つだ。

 
 
 

インドネシアの影絵 ワヤン・クリ

葛飾北斎 富嶽三十六景「神奈川沖浪裏」

 
 
 

2020年11月13日    五嶋 龍